キャリア教育の推進                        〔義務教育課〕

自ら学び、自ら考え、いきいきと活動できる  子どもの育成 〜児童のキャリア発達をめざして〜 

                            −宇部市立鵜ノ島小学校−

1 学校紹介2 具体的な活動内容3 成果と課題4 実践に当たってのポイント
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
地域社会との連携
児童のキャリア発達に応じたキャリア教育の推進
中学校・高等学校への滑らかなつながり

1 学校紹介
 宇部市の旧市内西部に位置し、桃山台地に連なる細長い地域で、その広さは東西1.1q、南北3.2qである。昔は、鵜ノ島開作として開拓された農村田園地帯であったが、現在は海岸に大工場が立ち並んでいて、校区内の山の手方面は住宅地帯となっている。
 地域団体、地域住民の教育に対する関心は高く、また、地域団体が中心となって、「通学合宿」等、子どもたちを巻き込んだ行事も活発に行われ、地域の宝としての子どもたちの育成に協力的である。保護者の多くも教育に対して熱心で関心も深い。本校は、平成16年度から宇部市の「キャリア教育」推進校の指定(3年間)を受け、「キャリア教育」を通して「コミュニケーション能力」を培うとともに、自ら学び自ら考える主体的な学習態度の育成を図り、生きる力を育む授業改善に取り組んでいる。
 校訓「かしこく やさしく すこやかに」をモットーに、家庭や地域に開かれた特色ある学校づくりを推進している。

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2 具体的な活動内容    
(1)低学年での取組み
@研究主題 自分の思いや考えなどをはっきり話すことができる力を育てる。
 
Aめざす児童像
 ○自分の意思がはっきり、順序よく言える子
 ○話す人の方を向いて、最後まで聞くことができる子
 ○自分の役割を最後まで果たすことができる子
 
B具体的な取組み  
スピーチなどで、学校や家庭、身の回りの経験や出来事から話したくなるような話を引き出す。
メモを使ったり、つなぎ言葉や順序を表す言葉を話型を提示したりして、話し方や聞き方のスキルを高める。
朝の会や学級会、生活科、「鵜の島・出会い・発見」(特活)のインタビューなど、話したり聞いたりする経験の場をたくさん設定する。
教科だけでなく、日々の学校生活の中で、詩の朗読や暗唱など、様々な活動に継続して取り組む。
 係や当番活動の実践と振り返りをさせる。
 ○家庭でのお手伝いを継続させる。
 ○活動への励ましと形成的評価をしていく。
 ○キャリア教育年間計画表の作成(1.2年)
(2)第1学年の実践  生活科「できるようになったよ」
@単元の目標                    
 ア キャリア教育の視点から
  人間形成能力(自他の理解能力、コミュニケーション能力)   
お世話になっている人や家族に感謝の気持ちを表すことができる。
自分のしていることやできるようになったことをみんなの前で工夫して発表することができる。
  情報活用能力(情報収集・探索能力、職業理解能力)
   ○身近で働く人々の様子がわかり、自分にできる仕事を見付けることができる。
  将来設計能力(役割把握・認識能力、計画実行能力)
規則正しい生活の大切さに気付くとともに、自分で家族のためにできることを見付け積極的に取り組むことができる。
  意思決定能力(選択能力、課題解決能力)
   ○自分のやるべきことを最後までやり通そうとする。
 
 イ 生活科の目標から  
家庭での自分の1日や友達のしていることを知り、自分のやってみたいことを見つけたり、やってみたりすることにより、自分や家族の生活に関心をもち、自分の役割を積極的に果たすことができる。
家庭での自分のしていることや、できるようになったことを振り返り、自分なりの方法で工夫して表現することができる。また、自分で家族のためにできることを考えることができる。
規則正しい生活の大切さ、家族における自分の役割、自分の成長やまわりの人々の支えなどに気付くことができる。
  
A単元について                   
 本単元は、子どもの生活の場である「家庭」と子どもがその一員である「家族」を取り上げることで、生活経験を基に学習したことを自分とのかかわりで実感し、「自立への基礎を養う」ことへつなげる。家庭は、子どもにとって生活の場であり、自分を支えてくれるところである。しかし、子どもにとってこれらはあまりにも当たり前のことであるため、家族の役割や自分の果たすべきことなどに気付かないことが多い。そこで、この単元では、自分の生活や友達の生活を見直す活動を通して、子どもが家族とともにしていることや、家族にしてもらっていることを振り返り、家族のことや自分でできることなどについて考え、自分の役割を進んで果たせるようになることをめざして設定した。さらに、家庭における自分の生活を見直し、規則正しく健康に気を付けて生活しようとする積極的な生活態度を育てることもめざしたい。自分でできることを探し、実行する。さらに自分を振り返ることによって自分の成長に気付くことは、喜びや自信を生み出し自立への基礎を育成することにつながる。また、自分や友達の体験を語ったり聞いたりすることで新しい発見もあり、さらなる成長へ発展していくであろう。
 
B指導にあたって                  
 「自分のいちにち」と「友達のいちにち」を比べることで、友達のよさを見つけ、自分もやってみようという積極的な気持ちが芽生えるように取り扱う。お手伝いは、最初は簡単にできるものから家の人と一緒に取り組ませるようにし、次第に自分でできるようにしていく。1学期から宿題でお手伝いをやってきているが、お手伝いではなく自分も家庭の中の家族を支えるひとりとしての仕事ができるという満足感を味わわせるようにする。自分のできることや役割について考える中で、家族の一員としてよりよい生活をしようとする意欲を高めていく。とは言え、この単元の活動の場は、主として家庭であるため、教室内の活動は子どもの活動に見通しをもたせ、活動と活動をつなぐものである。家庭内での活動の見届けは、保護者の協力なしでは考えられない。家庭との連携をとりながら学習を進めることで、子どもたちの自信や喜びを生み出し、望ましいキャリア発達の共通理解、共通実践につながるであろう。

C単元の指導計画と評価計画(全20時間)
 

D本時案「いえのしごと」
 (4/6時間)  
 ア ねらい 
  ・自分のしたお手伝いを発表できる。
  ・友達の発表を聞いてどの仕事も大切だとわかる。              
 イ 準備  発表カード 話し方チェックカード 
 ウ 展開 
   学習内容及び活動   支援及びキャリアとのかかわりと評価
@頑張ってきたお手伝いについて発表することを確認する。



Aどんなお手伝いをしたか発表しよう。
 ・嬉しかったこと
 ・困ったこと
 ・出来るようになったこと
 ・難しかったこと
 ・教えてもらったこと
 ・これからどうしたいか
           など





Bこれからも家族の一員としてお手伝いを継続していくことを話し合う。


 
・「どんなお手伝いをしたか」「どのようにしたか」「やり終えた後の気持ちはどんなか」が、みんなに伝わるように話すことを知らせる。
・友達の発表を一生懸命聞くことを約束させる。

・お手伝いの様子がわかるようにジェスチャーなども交えて発表させるようにする。
・感想だけでなく、家族への思いや願いなどもあれば付け加えさせる。
声の大きさや言葉遣いに気を付けて、お手伝いの発表ができたか。(コミュニケーション能力)
話す人の方を向いて最後まで話を聞くことができたか。(コミュニケーション能力)
いろいろな仕事に取り組み、それらの大切さがわかったか。(職業理解能力)    
決めた仕事を最後までやり通そうとしたか。(課題解決能力)
・発表について気付きや感想を発表させる。

・家庭にはたくさんの仕事があることを想起し、自分たちに出来る仕事を継続することが、家族の一員として大切なことであると気付かせる。
家庭での役割を果たしていくことの必要性がわかったか。(役割把握・認識能力)       
「家の仕事」はたくさんあり、どの仕事も大切であると気付くことができたか。(職業理解能力)
 
 いろいろな仕事やそこで働く人と出会い、親の仕事をみつめることで、自分の親の仕事に対する理解・共感(厳しさやがんばり、思い)・誇りを育てる。
親と向き合うことで、親の見方をとらえ直し、深める。
親への思いを出し合うことから、友達の生活や親への思いをわかり合う。
様々な人と出会うことで、聞く態度を身に付ける。
様々な人と出会い交流することで、コミュニケーション能力を高める。
親の願いを知り、今後の自分の生き方を考える。
思ったこと、感じたことを書くことで確かな表現力を育てる。

E学習の様子
                    
  
 
F考察                       
「家の仕事」への取組みは、どの家庭でも熱心に取り組み、指導していただけて幸せた。どの子もワンランク上の「家の仕事」に取り組み、継続することができた。
発表のためにカードを2種類用意したが、書くことがまだ自在でない1年生にとって少々負担であった。これを一つにすることも考える必要があった。覚えるくらいまで練習して発表したので、自信をもって堂々と発表することができた。動作化も入れさせたが、どの子も慣れた手つきで発表していた。日々の実践をみんなの前で見せることが自信につながり、また他の児童も感心すると同時に「自分もやってみたい」と次への意欲にもつながった。
発表をよく聞いていたかを評価するために「話し方チェックカード」を用意したが、項目をもう少し工夫した方がよかった。「チャレンジの様子」と「だれが喜んでくれたか」の項目を増やすと、もっと一人ひとりの仕事がどの家庭にとっても大切だと感じることができたように思う。また、発表についての気付きや感想を述べるに当たっても「声の大きさ」や「言葉遣い」に片寄らず、もっと多面的な意見も出てきたであろう。
全ての発表が終了した時点で、子どもたちのそれぞれの発表や実践の様子を見ての感想を述べる時間をとったが、毎回の発表ごとにその時間をとった方が次への意欲につながったであろう。
全員発表が終了した段階でもう一度自分の「家の仕事」を見直し、継続するかどうかを考えさせた。また、他にもやってみたい仕事はなかったかも考えさせた。その後、一つまたは二つの「家の仕事」チャレンジカードを作って続けている。1月の朝会では、そのチャレンジぶりを全校の前で発表することで自信と次への意欲につなげた。
(3)中学年での取り組み
@研究主題 キャリア発達を促す教師の支援のあり方
 
Aめざす児童像
 1 分かりやすく自分の思いや考えを表現する子
 2 進んでかかわろうとする子
 3 進んで計画を立て、実行する子
 
B具体的な取組み
 コミュニケーション能力  
分かりやすい表現を必要とする場を設定する。
相手の気持ちや考えを理解しようとする積極的な態度で正確に聞き取ったり質問したりするようにさせる。
相手の意見と自分の意見を比べながら、同じところ、違うところをはっきりさせながら自分の意見を言うようにさせる。
 自他の理解能力、職業理解能力
学校生活や家庭生活の中で、自分の仕事を責任をもって果たすことによって、働くことの大切さや喜びを感じ取るようにさせる。
友達や地域の人とのふれあいや様々な体験を通して、支え合い励まし合いながら人のよさを認めるとともに、自分のよさにも気付くようにさせる。
いろいろな仕事をしている人から、直接話を聞き、働くことの意義や喜びを感じ取らせる。
 計画実行能力
仕事調べを通して、いろいろな職業に興味をもつようにさせる。
目標をもち、振り返りをしながら進んで取り組むようにさせる。
調べ学習を進める中で、具体的な計画の立て方や作業の仕方を身に付けさせる。
キャリア教育年間計画表の作成(3年、4年、くすのき2)

(4)第4学年の実践  総合的な学習の時間「ぺあれんと探検隊」
@単元の目標                          
 ア キャリア教育の視点から
  将来設計能力(役割把握・認識能力)情報活用能力(職業理解能力)
   ○「ぺあれんと」という施設の役割や仕組みを知る活動を通して、人々の強い願いや協力によっ
    てこの施設が支えられていることを知る。
  将来設計能力(計画実行能力)意思決定能力(選択能力)人間関係形成能力(コミュニケー
  ション能力)情報活用能力(職業理解能力)
   ○「ぺあれんと」ではどのような仕事があるかを調べたり高齢者と交流したりする活動を通して、
    地域とのつながりを考え、自分たちにできることを友達と協力し合って計画・実行することが
    できる。
 
 イ 総合的な学習の時間の目標から
  ○誕生から現在までの自分の成長過程を振り返り、これからの成長と老化、健康と安全、老後と福
   祉などについて調べることができる。【情報収集能力】
  ○高齢者の方々との交流を通して、高齢者の抱える問題を共感的に考えることができる。【かかわ
   る・表現力】
  ○自分を大切にする姿勢や自分の存在感、他者を敬う気持ちなどに気付き、自分の生き方を見つめ
   ることができる。【実践力・応用力】
 
A単元について                         
 近年、核家族化・高齢化が進んでいる。このことは、本校区においても例外ではない。高齢化社会の中
で、異年齢の者同士が理解し合いながら共に生きていくことができるように、自分から働きかけたり、
遠い未来ではあるが、数十年後の自分や社会はどうなっているのかを考えたりしながら、高齢者に対す
る正しい認識と共感的な理解、協調して生きていこうとする態度を身に付けさせることは必要不可欠な
課題である。
 校区内にある地域コミュニティスペース「ふぁみらんど」内に設けられた介護老人保健施設「ぺあれ
んと」は、医療と介護とリハビリが連携し、地域交流をふんだんに取り入れた施設である。なぜこのよ
うな施設がつくられたのかを調べたり、ここで働く人たちはどんな仕事をしているのか、また、どのよ
うに協力し合って働き、高齢者に快適な生活空間を提供しているのかを知ったりすることによって、様
々な仕事があることや相手の気持ちを考えて働くことの大切さを学ぶことができると考える。また、高
齢者との交流を通して、高齢者を人生の大先輩として認識し、相手の生き方を共感的にとらえながら、
自分の生き方を見つめ直していくことができる。さらに、福祉問題や高齢者問題など、将来の問題につ
いて自分とのかかわりから考えることができる。
 
B指導にあたって                        
 導入で、昨年度「ぺあれんと」を訪問した際に印象に残っていることを想起させたい。そして、「ぺ
あれんと」の職員の話を聞くことを通して、「ぺあれんと」での仕事の内容や、その仕事をするために
はどんな知識や技能が必要か、将来自分が仕事をするためにはどんな準備が必要かにも気付かせ、仕事
への興味・関心を高めていきたい。その際、人と接することが多くなるので、挨拶の仕方、言葉遣い、
豊かな表情など、人と接するときの基本的なマナーを、単元全体を見通してしっかり指導したい。また、
人に優しく接する態度を育てるために、お年寄りが望むことは何かを知った上で相手が喜ぶことを考え
るように励まし、他の人の気持ちを考えようという意欲を持たせたい。そのために、2回の「ぺあれん
と」訪問を計画する。そして、1回目の訪問の後、良かった点に視点をあわせた振り返りを行うことに
より、児童の仕事や交流に対する意欲や自己有用感をさらに高め、意欲的に2回目の訪問計画を立てる
ことができるようにしたい。
 「ぺあれんと探検隊」で学んだことを実際の生活の中でどのように生かしていくかを本単元と並行して
道徳の学習で深め、実行できるように努力させることで、自ら学び、自己を見つめ直すようにさせたい。
 
C指導計画(全27時間)                    
 第一次 「ぺあれんと」訪問計画を立てる。【7】
  ・昨年度訪問したときのことを想起して、疑問に思うことやもっと知りたいことを発表する。(1)
  ・「ぺあれんと」で働く人の話を聞き、仕事内容や施設の様子などについて知る。(1)
  ・「ぺあれんと」訪問の準備をする。(4)
  ・挨拶の仕方、話の聞き方、質問の仕方など、人と接するときのマナーを学ぶ。(1)
 第二次 「ぺあれんと」を訪問する。【2】
  ・計画に従って訪問をする。(2)
 第三次 「ぺあれんと」訪問を振り返るとともに、新たな課題について話し合う。【4】
  ・「ぺあれんと」訪問を振り返って、感想を発表したり、学んだことを発表したりする。(2)
                                      ・・・本時2/4
  ・「ぺあれんと」訪問を終えて見えてきた新たな課題を出し合い、解決方法について話し合う。(2)
 第四次 第2回「ぺあれんと」訪問の計画を立てる。【4】
  ・第1回「ぺあれんと」訪問の反省をもとに、第2回目の訪問の計画を立てる。(4)
 第五次 第2回「ぺあれんと」訪問をする。【2】
  ・計画に従って訪問をする。(2)
 第六次 第2回「ぺあれんと」訪問を振り返るとともに、新たな課題について話し合いながらまとめ
     をする。【6】
  ・「ぺあれんと」訪問を振り返って、よかったこと、役に立ったこと、できるようになったことな
   どを発表する。(1)
  ・2回実施した「ぺあれんと」訪問のまとめをし、発表する。(4)
  ・学習したことを実生活で生かすにはどうしたらいいか話し合い、実践する。(1)
 
D本時案(第三次 2/4時間)                
 ア ねらい 「ぺあれんと」訪問を振り返って、学んだことや感想を発表して、新たな課題発見の手
       がかりを見つけることができる。
 イ 準 備  パソコン プロジェクター ワークシート
 ウ 展 開
学習内容及び活動 支援及びキャリアとのかかわりと評価
@「ぺあれんと」訪問について想起し、本時のめあてを知る。
 
  もっとすばらしい「ぺあれんと探検隊」になるために活動をふり返ろう。  
Aグループごとに、自分たちの活動についての振り返りを発表する。
 ・学んだこと
 ・できたこと
 ・喜んでもらったこと
 ・役に立ったこと
 ・改善点


B各グループについての気付き等を発表する。
 ・よかったところ
 ・現状維持したいこと
 ・改善点
C今後の努力点について考え、ワークシートに書く。
 ・もっと良くしたいこと
 ・現状を維持したいこと
 ・改めたいこと
 ・身に付けたいこと  
            など
・振り返りの観点をわかりやくするために、必要に応じて訪問の様子のビデオを視聴させる。
・聞き手は、聞く観点を書いたワークシートにメモを取りながら聞き、話し合いの観点を明確にさせる。
自分たちの活動の振り返りをわかりやすく発表できたか。(コミュニケーション能力)
友達の気持ちや考えを理解しようとしたか。(自他の理解能力)
・自分たちの考えと比べながら聞くよう助言する。
自分や友達のよいところを認め伝えることができたか。(自他の理解能力)
・新たな課題につながるものを考えながら聞くように助言する。
・ワークシートに書くことによって一人ひとりが次の活動への意欲が持てるようにする。
自分のやりたいこと、よいと思うことなどを考えられたか。(選択能力)
してはいけないことが分かり、自制しようとしたか。(自他の理解能力)
・必要に応じて、発表もさせる。
 
E学習の様子  
 ア 第1回「ぺあれんと探検隊」 
                        
 



 イ 第2回「ぺあれんと探検隊」



F考察                                
 ○仕事を意識させるために、介護老人保健施設「ぺあれんと」の仕事について質問を作り、「ぺあれ
  んと」の職員の方にその質問に答えてもらうというかたちで話を聞いたのはよかったと思う。子ど
  もたちは、この活動を通して、介護老人保健施設「ぺあれんと」ではどのような人がどのような仕
  事をしているか、また、どのように協力し合っているのかがわかってきたようである。
 ○しかし、実際には、第1回「ぺあれんと探検隊」では、まだ働くということが実感できず、交流を
  中心に計画が進むことになった。また、交流の計画も自分たちが楽しむという意識が強かったよう
  である。「ぺあれんと」の方の話を聞いた学習を子どもたちが十分に生かすことができなかったの
  で、支援をする必要があった。
 ○第2回「ぺあれんと探検隊」では、お年寄りの名前を覚えてお互いが名前で呼び合うことをめあて
  に準備を進めた。また、働くことや交流に関しても、第1回「ぺあれんと探検隊」の経験を生かす
  ように進めたので、子どもたちの班ごとの話し合いも活発になり、より一層意欲的に取り組むよう
  になった。
 ○2回実施した「ぺあれんと探検隊」を通して、子どもたちが「個性を大切にしたい」「自分の祖父
  母を大切にしたい」「人に親切にしたい」などの気持ちを持つことができたのは大きな成果だと思
  う。また、保護者の目から見ても我が子に変化があったという報告があり、その成果が伺える。
 ○今回の学習活動を通して、進んで自分の考えを表現したり、人の話をしっかり聞いたりしながら自
  分の力で計画を立て、実行することができる子どもが増えた。このことから、子どもたちのコミュ
  ニケーション能力や計画実行能力が育ち始めてきたと思われる。

(6)第6学年の実践  総合的な学習の時間「働くこと」
@単元の目標                    
 ア キャリアの視点から
  将来設計能力(役割把握・認識能力)
   ○全校児童がよりよい学校生活を送ることができるように、環境を整える。
  人間関係形成能力(コミュニケーション能力)
   ○他者とのかかわりの中で、自分の思いを伝えることができる。
  将来設計能力(計画実行能力)
   ○職場体験のためにしなければならないことを理解し、実行することができる。
  情報活用能力(職業理解能力)
   ○いろいろな職業や働くことの喜びを知ることができる。
 
 イ 教科の目標から
  ○最高学年として自覚をもち、よりよい学校生活を送る。 
  ○人との「出会い・ふれあい」から、自分の生き方を主体的に考える。
  ○望ましい勤労観、職業観、価値観などについて考え、将来について自覚を深める。
 
A単元について                  
 本単元は、勤労体験を通して職業観を身に付けるために意図し設定したものである。
 4月当初、全校児童のために、働くことを通し、子どもたちに高学年としての自覚をもたせた。そこから、「働く」とはどういうことかを考えさせ、「職場体験」へ広げていく。体験場所については、1回目は、全員が同じ施設で同じ経験を共有することを通し「働くこと・職業」を意識付ける。2回目は、少人数に分かれ自分の興味のある職場で新たな経験を積み重ねていく。その際、少人数で計画を立て実行するために、自ら電話で交渉したり、挨拶に行ったりするなど様々な体験ができ、コミュニケーション能力・計画実行能力を養うことができる。本単元は、子どもたち一人ひとりが「働くこと」についてじっくり考えるのに適している。
 
B指導にあたって                 
 学習の見通しがつくまでしっかり考え、話し合わせてから進めていきたい。見通しを持つことがそれぞれの活動の目的・必要性の理解につながり、意欲的に活動するために必要となる。しかし、児童の実態からみて一人学習を進めることに戸惑うことも多いと思われるので、同じ目的をもった子ども同士でグループを作り、協力して学習を進められるように配慮したい。事前の準備として、必要に応じグループごとに繰り返し練習をしたり、評価しあったりさせる。
 あらゆることを実際に体験させることにより、目的を達成できたときの喜びを味わわせ、「夢に向かって努力する子ども」につなげていきたい。
 体験活動をする前に道徳で、「働くってどういうこと」(心のノート)や「ぼくの仕事は便所そうじ」を扱っておく。
 
C単元の指導計画と評価計画(全52時間)      


時間
 


ねらい・学習内容
 

評価規準と関連

 
学習活動における具体的な評価規準
 







学習の計画

 

 


 

意欲的に学習の計画を立てる。




働こう

 

 

 


最高学年としての自覚をもって作業をする。




いもを植えよう

 

 


 

意欲的に学習の計画を立てる。

12
 

職場体験をしようT


 


 


 


 

働くことの大切さや喜びを知る。

26
 

職場体験をしようU


 


 


 


 

体験先との交渉や体験を通して、働くことの大切さや喜びを知る。


 

鵜の島・出会い・発見


 


 


 


 

リーダーとして班をまとめ、安全に気を付けながら活動をする。



 

学校をきれいにしよう
 



 



 



 



 

感謝の気持ちをこめて奉仕作業をする。
 
 アねらい
  ・職場体験をするためにしなければならないことを理解し、実行することができる。
  ・いろいろな職業や働くことの喜びを知ることができる。
 イ準備 活動カード
 ウ展開

学習内容及び活動

支援及びキャリアとのかかわりと評価

@計画を立てる。(11)
・体験先を決める
・受け入れ先に電話をかける
 お願いの電話をかける(練習・実践)
 事前挨拶のための電話をかける              (練習・実践)

 





・事前挨拶に行く






A職場体験を前にして(1)
・いろいろな場面を想定し、対応の仕方を考えさせる。

B職場体験(4)      
・8か所に分かれ体験活動をする。(スポーツ店2、ケーキ屋、乳児保育園、おもちゃ屋、住宅展示場、小児科、交番)



Cまとめ(10)     
・お礼
 グループごとにお礼の手紙を書く。
 (手紙、寄せ書き、カレンダー)
・発表
 ポスターセッションをする。


 

・将来つきたい職業から体験場所を決めさせる。
電話番号を調べることができたか。(情報収集・探索能力)
・児童が電話をかける場所へは事前に連絡してお く。
・グループごとに電話をかけさせ、その都度かけ た児童、そばで聞いていた児童に気付きを言わ せる。
・全員が電話や挨拶の体験ができるように、その 都度各自に練習をさせ、本番は交代でさせる。
声の大きさや言葉遣いに気を付けて電話をかけ ることができたか。(コミュニケーション能力)
声の大きさや言葉遣いに気を付け、相手を見て 話すことができたか。(コミュニケーション能 力)
必要なことを聞き、メモを取ることができたか (コミュニケーション能力、情報収集・探索能  力)
・いろいろな対応の仕方があることに気付かせる

自分なりの考えをプリントに書くことができた か。(課題解決能力)


・安全面を考慮し、体験場所へは職員、保護者が ついて行き、記録用の写真を撮る。
声の大きさや言葉遣いに気を付け、相手を見て 話すことができたか。(コミュニケーション能 力)
働くことの大切さや喜びを味わうことができた か。(職業理解能力)

・お礼の仕方は、グループに任せ工夫させる。
・友達と話し合い、作ることができたか。(計画 実行能力)
体験したことを友達に伝えることができたか。 (計画実行能力)
友達の体験を共有することができたか。(職業 理解能力)
 
 
F考 察                                       「将来つきたい職業」から導入し体験場所を決めることにより、意欲的に取り組むことができた。しかし、どんな職業につきたいか決まっておらず、学習を進めることができない児童もいた。その児童には、「今までに、将来つきたいと思ったことのある職業でもよい」と声をかけたが、「考えたことがない。一度も思ったことがない」と言い、決定するまでに2〜3日かかった。
 体験場所の決定には、希望する職場が校区内にないものが多いため、希望する職種に少しでも関係のある職場を探すことにした。それでも、校区にはないものや、受け入れてもらえず他の場所を探さなければならないこともあった。この経験が逆に、何度も電話で交渉する練習になり、受け入れが決まったときの喜びにつながった。
 事前に電話のかけ方、挨拶の仕方の練習をしたが、経験が少ないため、緊張しうまく話すことのできない児童が多い。全員ができるように、練習した後に代表の児童が電話をかけたり、挨拶をしたりした。しかし、練習を繰り返すことにより、覚えたことを一方的に話し、相手に話しかけられると戸惑い黙り込んでしまう児童もいた。何度も繰り返し体験させることにより徐々に慣れてはきたので、更なる体験が必要である。
 職場での活動については、指示されたことをこなすことが精一杯で、活動中にお客さんや受け入れ先の担当者以外の方に挨拶をする余裕はなかったようである。掃除という活動一つをとってみても、植え込みにゴミが多い、ガムを取るのが大変という感想があるように、取り組む姿勢もいつもとは違い、新しい発見があった。
 受け入れ先には、児童の世話をするために職員を増やしていただいた。休みの日にボランティアで対応をしていただいたところもあり、誠にありがたかった。この受け入れ先の好意を児童へ知らせることにより、一層頑張ろうという意欲にもつながったようである。
自分のテーマ、目的をもち学習に取り組ませたが、テーマを意識して活動することができなかった児童もいたようである。事前に何をしたいのか、どんなことを学びたいのかをしっかり押さえておく必要があった。
(7)全校縦割り班による取組み 鵜の島・出会い・発見)
@目的                                    
施設訪問を通して、鵜の島校区の町や人にふれ、自分たちの校区に親しみをもてるようにする。(社会・生活科・総合的な学習の時間との関連)
異年齢集団で行動することにより、お互いを理解し、協力していく態度を育てる。(道徳との関連)
働く人とのふれあいを通して仕事への理解を図る。(キャリア教育との関連)
    
A内容                                    
 ○地域の店や施設で1時間程度の体験活動をする。
 ○町並みを見学し、1〜2か所程度の店や施設を巡る。
 ○公園で昼食をとりながら「秋見つけ」をしたり、縦割り班で遊んだりする。
 ○帰校後、礼状作りや簡単な発表会を行う。
 
B進め方                                      
(1)施設との交渉(夏休み)
  ○事前に話し合った施設を各ブロックで分担して交渉(日時など)をする。
 
(2)第1回縦割り班話合い(3〜6年生)   
  ○担当からの説明を聞く(訪問の目的を明確にとらえさせる。)
  ○体験活動場所・見学場所を選ぶ。
  ○体験したい内容を話合う。
   (担当は、放課後などを利用し活動内容を施設の方と話し合う。)
 
(3) 第2回縦割り班話合い(1〜6年生)
  ○活動内容の確認をする。
  ○昼食場所を決める。
  ○日程、道順などを決める。
    (安全面・集団行動における注意事項等)
  ○5・6年生は、お願いの挨拶の練習をする。
   ・挨拶、話し方、聞き方、参加態度(私語・服装)
   ・マナーカードの活用
     (見学先での話の聞き方、お礼の手紙の書き方)
  ○他の学年は、しおりの表紙を描いておく。
  ○施設についての情報収集をする。
     (昨年度の経験など、当日までに簡単に情報交換)
  ○準備物(紙芝居や出し物など)について話し合う。
 
(4) 施設へのお願い(担当、5・6年生)
  ○道順通りに歩き、時間や安全を確かめる。(各班でしおりを作成)
 
(5) 第3回縦割り班話合い(1〜6年生)     
  ○班の目標を話し合う。 (できあがったしおりをもとに)
  ○昼食時の過ごし方を話し合う。
  ○日程、体験活動の確認をする。
  ○持参物を作成する。(必要な施設のみ、紙芝居・ゲームなど)
  ○質問したいことをメモする。
  ○訪問の仕方(マナー)の練習をする。(1〜6年生)
   ・マナーカードを活用する。(役割演技等でシュミレーション)
  ○事後活動について見通しをもつ。(当日及びその後)
   ・礼状(寄書き)の作成(当日)
   ・施設紹介カードの作成(体験の共有化、来年度への活用)
                        
(6) 鵜の島・出会い・発見(当日)
  ○体験活動・見学・昼食
  ○帰校後、お礼の寄書きをする。
   (わかったこと、楽しかったことなどできるだけ詳しく書く)
  ○日程
  晴天の場合  
 9:00
 9:00〜9:15
 9:15

  [3時間45分間]


13:00
12:45〜13:45
運動場に縦割り班で集合
校長先生の話・諸注意
出発
 ○体験活動
 ○お店、施設見学
 ○昼食 1時間程度
  (秋見つけ・みんなで遊ぶ)
帰校
各班で礼状作り
雨天の場合 (予備日)  
 9:00
 9:00〜9:15
 9:15
11:45
5校時
運動場に縦割り班で集合
校長先生の話・諸注意
出発
帰校(帰った班から礼状づくり)
礼状作り
 
(7) 第4回縦割り班話合い(1〜6年生)   
  ○体験について施設紹介カードにまとめる。(しおりの中にメモしたこと)
  ○できあがったら、職員室前の廊下に掲示する。
 
(8) 施設へのお礼(担当、5・6年生) 15:20〜
  ○寄書きの礼状を持って、各施設を回る。
(9) 体験内容の発表会(全校朝会で)
  ○各班の班長が、体験したことを発表する。
 
C体験活動内容                                   

 体 験 場 所

       体   験   内   容
小売り業
 (5グループ)




 

・店内や仕事をされている様子を見学する。
・商品陳列の手伝いをする。
・接客をする。(「いらっしゃいませ」「ありがとうござ います」など)
・商品の包装の手伝いをする。
・店長さんなどから話を聞く。(質疑応答)
・商品を使っての体験をする。(車いす・電動いす・介 護ベッド)
製造業
 (2グループ)

 

・工場内を見学する。
・工具についての説明を聞く。
・簡単な製造活動をする。
・事業所からの話を聞く。(質疑応答)
神社・寺
 (2グループ)

・境内・廊下などの掃除をする。
・話を聞く。(質疑応答)
介護施設
 (1グループ)

・施設内の人(高齢者)と昔の遊び・歌・お話などで交 流をする。
保育園
 (1グループ)

 

・乳幼児の世話をする。(着替え・体を洗う・トイレ介 助など)
・乳幼児と遊ぶ。(砂遊び・遊具で・絵本・絵・歌など )
・保育士の話を聞く。(質疑応答)
病院
 (1グループ)



 

・薬の調合を体験する。
・受付の練習をする。(診察カードの作成)
・聴診器を使って体験をする。
・血圧・身長・体重などの測定の仕方を教わる。
・医師の話を聞く。(質疑応答)

 
 
 

   

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3 成果と課題
(1)研究の成果
 初年度は、手探りの状態での取組みであったが、今年度の研究の成果として、以下の4能力に顕著な成果が見られた。
○コミュニケーション能力について
 話し方指導、インタビュー指導、聞き方指導を基に、地域の方やゲスト・ティーチャーとのふれあいの実践を通して、場に応じた話し方が身に付いてきた。低学年では、「いつ・だれと・何を・どうした」といった会話に大切な事柄を落とさずに話せるようになってきた。中学年でも、体験活動をたくさん取り入れたことで、礼状の書き方や挨拶の仕方・言葉遣いが適切にできるようになった。
○自他の理解能力について
 総合的な学習の時間や生活科、道徳と関連させた学習を仕組んだことで、自分のよさや友達のよさに気付くことで、他の学習や活動に意欲的に取り組む姿勢に、変容が見受けられた。また、地域にかかわることで、地域についての理解を更に深められた。一方、地域の方には、学校の取組みについて知っていただき、理解ある対応をしていただくことができた。
○職業理解能力について
 低学年では、家の手伝いに継続して取り組むことと同時に、学級での当番活動や係活動にも意識して取り組めるようになった。中学年では、ゲスト・ティーチャーを招聘して仕事にかかわる話を聞いたことで、将来の夢をもてた子どもが現れた。また、いろいろな人とのふれあいによって、「人の役に立つ仕事に就きたい」や「人から喜ばれる職業に就きたい」といった目標を見つけた子どももいた。高学年でも、子どもたちに、将来就きたい職業(夢)について意識させることができた。また、家庭で職業や将来についての会話が増えたとの報告もあった。
○計画実行能力について
 体験活動を繰り返したことで、見通しをもって学習に取り組む子どもが増えた。また、前回の活動を振り返って、自己反省し、改善して取り組もうとする子どもや参考資料を自主的に収集する子どもも増えた。
 
(2)今後の課題
○継続した取組み
 働くことの大切さを体験活動等を通して学んでいく中で、8つの能力が身に付くと思われる。したがって、今後も継続して取り組むことが必要である。その際、学年内、学年間での体験内容を系統的に仕組むことが大切である。
○課題を明確にした取組み
 子どもたちが主体的に取り組むためには、活動内容をしっかり把握させ、学年に応じた課題を明確にしておく必要がある。
○中学校・高等学校との滑らかなつながり
 インターンシップにおいて、中学校や高等学校につながる体験活動を、連携をとりながら進めていく必要がある。

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4 実践に当たってのポイント
地域社会との連携
 キャリア教育の推進のためには、各家庭や地域の事業所(会社や商店)との連携が不可欠である。各家庭には、仕事について子どもたちに話をしていただいたり、各事業所等には、職場体験や見学をさせていただいたりして、職業人としての在り方や生き方を学ばせたい。そこで、学校や地域の特性を生かした体験活動を仕組めば、いろいろな人や職業との出会いの機会が増え、一人ひとりの夢や希望の実現に向け努力する態度の形成につなぐことができる。そのためには、体験活動の意図を正確に伝えるとともに、連絡を密にとり、お互いの意思の疎通を図っていくことが大切である。
児童のキャリア発達に応じたキャリア教育の推進
 キャリア教育で育てたい4領域(「人間関係形成能力」「情報活用能力」「将来設計能力」「意思決定能力」)8つの能力(自他の理解能力、コミュニケーション能力、情報収集・探索能力、職業理解能力、役割把握・認識能力、計画実行能力、選択能力、課題解決能力)について、学校教育活動のどの部分で重点的に取り組むかといった視点でカリキュラムを見直し、再構築するとよい。子どもたちのキャリア発達に応じて、具体的な能力・態度をどの単元で身に付けさせるかを研究していくことが必要である。その際、総合的な学習の時間や生活科を中核として、道徳(心情的な高揚)や特別活動(主体的な活動の促進)などの学習と関連させて取り組むことによって、効果を上げることができる。
中学校・高等学校への滑らかなつながり
 キャリア教育を発達段階に応じて、意図的・継続的に進めなければならないことを考えると、小学校卒業以降のキャリア教育も見据えながら推進していく必要がある。幸い、宇部市では小・中・高等学校が一堂に会しての宇部市キャリア教育実践協議会があるので、小・中・高等学校の連携もとりやすい。

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