確かな学力育成のための実践研究の取組み                    〔義務教育課〕

確かな学力を育てる学習指導の工夫
  
〜学習意欲を高め、個に応じた指導法の改善〜 
   
柳井市立柳井南中学校−
                    
1 学校紹介2 研究主題について3 授業改善をめざした実践
4 人間関係づくり5 心の教育6 成果と課題
実践に当たってのポイント
○ 昨年度の実践を踏まえた取組み
○ 全教科、全教員による協同研究と共通実践
○ 授業の質を高めるために、授業改善のみならず集団の質を高める取組みをする。

1 学校紹
 本校の立地する柳井市大字阿月・伊保庄は柳井市南部に位置する。室津半島東部海岸線南北16q、面積22.44kuの細長い地域であり、南部になるにしたがって過疎化傾向が強い。学級数は4、全校生徒数は92名の小規模校であり、校区の小学校は2校(小田・柳井南)である。
「健康・親和・自主・努力」の校訓のもと、心身ともに健康で、確かな学力と豊かな人間性をもち、自ら考え創造する実践力のある生徒の育成をめざしている。生徒は明るく素直で、気持ちのよいあいさつができる。また、生徒指導上の問題もほとんどなく、落ち着いた学校生活を送っている。地域の教育力は高く、学校教育への地域の期待も大きい。
   
 TOPへ戻る                                         

2 研究主題について
 生徒の学習に対する意識や意欲、理解の程度に応じた指導を追究し、確かな学力を育成していきたいと考え、「 確かな学力を育てる学習指導の工夫 〜学習意欲を高め、個に応じた指導法の改善〜 」という研究主題を設定した。
 また、学びをより確かなものにするためには、互いに認め合い、支え合い、高め合う集団であることが必要である。 自分を安心してさらけ出せる集団で共に学んでいけば、自分一人での学び以上の成果が 期待できる。この土台づくりが欠かせないと考えた。そこで、次の三点を研究の主眼とした。
 @ 授業改善
 A 人間関係づくり
 B 心の教育
 研究期間は2年間とし、全学年を対象として、全教科・領域等を通じて実施する。また、一年次(17年度)を生徒の現状把握及び教科指導法の試行期間、二年次(18年度)を実践、検証期間として位置付けている。

            三本柱の構造
  TOPへ戻る


3 授業改善をめざした実践

(1) 各教科における、「つけたい力」の洗い出し
  生徒の現状を踏まえ本校生徒につけたい力を各教科で考えた。
          
                 つけたい力
(2)授業研究

@「おいでませ」授業の実践
 研究授業のように形式にとらわれない気軽な授業公開を、「おいでませ」授業と称して全教科で実践し、声を掛けあって参観し合った。

○特長
 日常の教育活動と同時進行で実践できるため、全教科での公開が可能になり、研修の機会を多くとることができる。

○ 提示した工夫点やポイント(例)
 学活(1年2組)「体験から言葉を引き出す工夫」
 理科(2年) 「協同/指示を正確に伝える・聞く」
 音楽(1年) 「全員参加/楽しく音楽的要素を学習」
 国語(1年1組)「導入の工夫と個への対応」
    
                       「おいでませ」授業
A 「授業の構造図」を活用した授業研究
 本校は小規模校のため、授業研究は他教科を参観しての研修となる。共通の土台で授業を研究する手だてはないかと考えていたとき、柳井市教委から「授業の構造」について指導を受けた。よい授業の構造は各教科共通で、生徒の考える力を引き出すような授業をしなければならないこと、それには一時間の生徒の思考の流れを「拡散」から「集中」へもってくることが大事だという指導を受け、これを二学期からの授業改善に取り入れた。研究授業は三教科(英語・音楽・理科)と道徳で実施した。
     授業の構造図.pdf
                 
(3)個に応じた指導〜補充プリント「漢方薬」の実施
 学力に応じた個々への対応を図るため、6月にCRTを全校生徒を対象に五教科で実施した。結果をもとに本校独自で分析表を作成した。
 分析の結果、各教科に本校生徒が苦手としている分野があることが浮き彫りになった。 生徒が苦手とする内容を個人指導する手だてとして2学期から実施したのが補充プリント「漢方薬」(効果が少しずつ効いてくるという意味で命名)である。途中から実施方法を変えて行った。
     
         CRT分析             漢方薬1

○実施方法
 ・各教科A5版のプリントと答えを準備する。
 ・プリントは一週間をめどに更新する。
 ・わからない部分は教師に質問に来るよう指導する。
 ・図書館にファイルケースを置き、誰でも自由に取ることができるようにする。

○問題点
 ・教師の目が届かず、誰がどんなプリントをやっているか把握できない。
 ・真に補充学習を必要とする学力低位の生徒に、マンツーマンで指導できていない。

○ 改善点・工夫点
 ・個人別のプリントに変更する。「漢方薬」の袋に教師が入れたプリントの問題に取  り組む。教師が目を通し、アドバイスをしたのち、次のプリントを渡す。
 ・内容は個人の能力に応じて決定する。また、学習開始は本人の自由意思である。
 ・ごほうびシールを準備し、努力のあとが目に見えるようにする。

       漢方薬2

○ 効果と課題
 ・学習の進んだ生徒の発展学習にもなり、学力に応じた個々への対応という点で効果  的な取組みとなっている。
 ・学習が苦手な生徒の提出率は落ちる傾向にある。続ける気力をいかに持続させるか  という点が課題である。

(4)子どもの視点に立った授業づくり〜授業評価

○ ねらい
 ・教師の授業改善への意欲の高揚と指導方法の工夫改善、指導技術の向上
 ・生徒の授業に対する意欲・関心の高揚と学力の定着・向上

○ 実施内容
 ・全教科に関する自己評価・授業評価のアンケートを2学期末に実施 (資料1)
 ・各教科ごとの授業評価を3学期の単元終了時に実施 (資料2)
授業評価資料1.pdf
           資料1

授業評価資料2.pdf
          資料2

(6)学習意欲・目的意識を高めるために〜高校の先生による出張授業

○目的
 ・三年生が各高等学校・各科の特色ある授業を体験することにより、中学校卒業後の進路選択の参考にするとともに、卒業までの時期を目的意識と意欲をもって学習に取り組む契機とする。
 ・各高等学校教員の出張授業を通じて、中学校の実態、中学生の学力状況をより理解してもらう機会とする。

○参加高等学校(平成17年度)
 山口県立柳井高等学校
 山口県立柳井工業高等学校
 柳井学園高等学校
                出前授業(体育)          出前授業(技術)

 TOPへ戻る


4 人間関係づくり
 確かな学力を育てるためには、生徒の学習意欲を高め、わかる喜びと学ぶ楽しさを味わうことができる授業づくりを行うことが肝要である。その授業づくりの基盤となるのが、学習集団づくりである。学習集団の質が向上していく中で、生徒はより望ましい人間関係を築く術を学んでいくものと考える。

○聴く態度の育成
 学習集団づくりの第一歩として「聴く」態度を育てることに全校体制で取り組んだ。各学級、各教科をはじめ、学校生活のあらゆる場面で聴く態度を育てていく取組みを行っている。

○具体的な方策
 ・生徒・・静かにする。
 ・発言者の方に体を向けて注目する。
 ・話の内容を頭の中で整理し、内容の概要を言うことができる。
 ・教師・・静かになるまで待つ。
 ・発言者に注目させる。
 ・常に一人ひとりの意見を大切にする姿勢をくずさない。

 TOPへ戻る


5 心の教育
(1)文化祭を豊かな心の育成の場に
 文化祭に向けてのテーマ追究活動において、各教科・道徳・学活・総合的な学習の時間での効果的な連携の在り方を模索し、全教職員で共同実践することによって、人間関係づくりや豊かな感性の育成等、学力向上アクションプランにおける豊かな心の育成をめざした。
  
       文化祭1            文化祭2
TOPへ戻る


6 成果と課題
(1)生徒の変容の視点から
 下記の内容は、平成17年12月に実施した生徒アンケ−トの結果の一部である。
(数字は5段階評価)
ア あなたは学校へ行くのが楽しいですか。→1年(4.4)2年(3.8)3年(4.1)
イ あなたは学習に意欲的に取り組んでいますか。→1年(3.8)2年(3.5)3年(3.8)
ウ あなたは、先生が授業をわかりやすくしようと努力していると思いますか。
 →1年(4.4)2年(3.8)3年(3.5)
 以上のような結果から、これまでの実践がある程度良い影響を及ぼしていると考えたい。しかし、一部ではあるが否定的にとらえている生徒がいることも無視できない。

(2)教師の授業改善へ向けた意識改革の視点から
 授業改善へ向けた取組みを始めて、徐々に授業に対する意識が変わりつつある。
ア 「拡散から集中へ」の授業に全教科全教員が取り組んだ結果、授業研究の深まりが生まれ、授業改善にかかわる会話が日常的に行われるようになった。
イ 各教科で生徒による授業評価を取り入れたことで、授業の工夫・改善が促進されるようになった。
ウ 「漢方薬の処方」によって教師の目が集団から個へ向くようになり、生徒一人ひとりの目線で授業の構想が立てられるようになった。

(3)今後の課題

@ 学習の質を向上させていくための課題
ア さらなる授業改善について
 「拡散から集中へ」の要件のみならず、「指導と評価の一体化」、「生徒同士の学び合い」を含む三つの要件を備えた授業を本校のスタンダ−ドな授業として定着させ、日常化させていくこと。
イ 一人ひとりの学びを充実させることについて
 「家庭学習の習慣化」や「総合的な学習の内容改善」に着手し、具体的な改善の手だてを取ること。さらには、発展学習に偏重しつつある「漢方薬」の内容を再検討し、基礎的な内容の徹底への有効な対策を立てること。

A 集団の質を向上させていくための課題
ア 学級経営の改善について
  学習の質の向上を「下支え」するものの一つとして、学級経営の改善、班を基礎にし た学級集団づくりに全校的に取り組むこと。
イ 心の教育の推進について
  各学年の体験的諸活動や全校行事を、道徳教育の視点から総合単元化して取り組むこと。さらには、生徒の日常的な活動を通じて「歌声の響く学校づくり」に取り組み、豊かな感性・心情を育てること。

◎校長から見た指導のポイント
○ 校内研究推進委員会(管理職を除いて4名)各人の役割をより明確にするとともに、全体で共通理解する時間を必ず確保しながら実践研究を進めること。
○ 諸取組みの進め方については、可能な限り短いテンポで進捗状況を検証する機会を設けること。
○ 各人がより具体的な個人目標をもち、少なくとも学期毎に検証する機会を設けること。


 TOPへ戻る