◆山口に帰って店を出す決意をする
  レストランには5年いたけど、その頃から自分のお店を出したくなって、いろいろ物件を見たりしていた。
  だけど大都会では競争が激しすぎるし、資金もいるし、こうなったら下関に帰って、店を持ったほうがいいかもと思ったのね。
  こうして私の開店準備が始まったというわけ。
  山口ではUターン融資制度があったし、それに県や市の事業資金制度を利用して下関に小さなレストランを開店しました。実はこんなふうに開店しようと思った裏には、今の夫の存在があったんですよ。
  彼とはレストランで一緒に働いた同僚で、これがまた腕がいいんだ。それに親の援助なしに料理の修業をしたというだけあって、苦労は人一倍した人で、とても人間的にできた人だった。
  年が5つも離れているっていうのも頼もしく大人に見えたのかもしれないな。
  ともかく、結婚して二人で店を出そうということで、結婚と開店準備が同時という忙しさだったけれど、あの頃は充実感に充ち満ちていたわね。
  何しろ二人の夢がかなうんだから。
  今、思えば、あの若さで自分の店が持てたのは融資制度がしっかりしている山口だからできたのかもしれないって、この頃思うのね。
  それに大都会だと情報や文化が受け身になってしまいがちだけど、こっちだとどんどん自分から発信することができるじゃない。
  その点でもすごく楽しい。