◆地元が大好きな高校生
 俺んちは、小郡にある。先祖代々、農家だけど、水田が1haって規模で、とても生計を立てるなんて無理。
  父は地元建築工事会社に、母は農協のパートに、祖父母が農作業をやっていて、休日には両親も手伝っていた。俺もひまなときは手伝ったけど、別 に農業って嫌いじゃなかったよ。力仕事が得意なのは、この農作業が効いているのかも。こうやってこぢんまりと家族で生活していたせいか、このぬくぬくとした感じは嫌いじゃない。
  高校時代はバスケット部。
  だけどカラオケが好きで、しょっちゅう友だちや家族とチャリでカラオケ屋に行って歌ってたから、「カラオケ部の太郎」と言われてた。高校は普通高校だったけど、今になって思えば、高卒後に社会に出るつもりだったから、すぐに役立つ商業科や工業科に行ったほうがよかったのかなあと。
 だけど親父、お袋が大学進学も期待してたみたいだったから、勧められるように普通高校に行ってしまったんだ。
  同級生はほとんど県外の大学に進学していったけど、もともと勉強に意義を見い出せない俺は、卒業後は就職って決めてた。