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1 「しもやけ」を「かんばれ・かんやけ・ゆきやけ」と言う
 山口県周防部の瀬戸内沿岸では、凍瘡(とうそう)「霜焼け」のことを「かんばれ(寒腫れ)」と言います。この語は、山口県以外では、広島県竹原近辺の沿岸と島々、熊本県天草下島南岸、千葉県北部利根川沿いの一部(霞ヶ浦の南)など、限られた地域のみで使われている方言です。山口県長門部の大半と周防西部の山間部では「かんやけ(寒焼け)」と言い、これもまたこの地方だけに限られている方言です。本州の日本海側や高地などを中心に広い範囲で用いられる「ゆきやけ(雪焼け)」は、その殆どの地域に降雪量 の多いことが共通しています。山口県でも、雪が多い阿武郡北部や玖珂郡北部などでは「ゆきやけ」を使います。

  江戸時代初頭の1603年、長崎学林のイエズス会宣教師たちによって刊行された『日葡辞書』には「Ximobare」とあり、当時の中央では「しもばれ(霜腫れ)」が使われていたことが分かります。現在この語は、九州の大半、四国の太平洋側、近畿南部、伊豆の一部、山形県の日本海沿岸などに方言として残っています。江戸時代の中央の文献には「しもばれ」のほかに「ゆきやけ」の用例も見られ、両方とも使われた時代があったようです。「しもやけ」の語が広い範囲で一般 化していったのは江戸後期からです。ちなみに奄美や沖縄には、古来「しもやけ」を表現する語がありません。
 
        森川信夫著『面白くて為になる 山口弁よもやま話』より
 
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