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10 「包みを背負う」ことを「かるー」と言う
 包みなどを背負うことを、山口県の大半の地域で普通 「かるー」と言います。東京をはじめとして東日本の広い範囲で使われている、「しょう」という言葉に相当するものです。「しょう」は、「せおう」が音韻融合により変化したもので、「せおう」は「おう」から派生した言葉です。つまり、「しょう」は比較的新しい言葉で、「おう」は古くからある言葉だと言うことができます。「おう」は中国の大半と四国東部、近畿西部などで使われています。山口県でも、広島・島根との県境域などでは「おう」をよく使います。山口県では主として「かるー」を用いる地域がかなりの範囲を占めていますが、下関などでは「からう」を使います。「かるー」「からう」を使う地域は、山口県と九州、四国西部などですが、地理的に見ると「からう」の方が周辺地域に分布しており、「かるー」は「からう」から変化したものであろうと思われます。方言周圏論的な考え方に立てば、「からう」→「かるー」→「おう」の順に言葉が発生したことになります。ちなみに九州の中部以南では、幼児などを背負うことも「かるー」「からう」と言います。山口県では普通 「おう」と言っている行為を表す言葉です。
 
        森川信夫著『面白くて為になる 山口弁よもやま話』より
 
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