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13 「恋愛する」ことを「こころやすーせる」と言う
 最近ではあまり聞かれなくなりましたが、伝統的な山口弁では、「恋愛する」ことを「こころやすーせる」と言います。
  「こころやすい(心安い)」という形容詞は、文語においては「こころやすし」という基本形で使われていた古くからある言葉です。語意としては〈@安心である。心のどかである。A気心がわかっていて親しい。懇意である。B容易である。簡単である。〉などがありますが、山口弁で使われているのは、Aの意の流れをくむものです。『源氏物語』の「帚木」の巻にも「親しく馴れ聞え給て遊びたはぶれをも、人よりはこころやすく、なれなれしくふるまひたり」というくだりがあります。
  山口弁では、「私たちは恋愛結婚をしました」というのを、「私らー、こころやすーせて一緒になりました」と表現します。また恋愛結婚をした夫婦のことを「こころやすみょーと」などとも言います。何とも雅な響きのある、由緒正しい言葉だと言うことができるでしょう。失われるには余りに惜しみある方言の一つです。
 
        森川信夫著『面白くて為になる 山口弁よもやま話』より
 
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