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17 「大きい」「太い」「目が粗い」は皆「いかぇー」
 標準語の「大きい」という語に相当する山口弁の形容詞は、県内の殆どの地域で「いかぇー」が使われます。丁寧に発音した場合は「いかい」ですが、伝統的山口弁では、連母音アイ[ai]が普通 アェー[ æ▲]と発音される音韻法則により、対義語の「こまい(小さい)」が「こまぇー」になるのと同様、「いかい」は「いかぇー」と発音されるのです。
 この「いかぇー」は「大きい」という意味だけでなく、「太い」「目が粗い」ということを意味する場合にも使われます。それぞれの意味分野を区別 しないで用いられるのですが、このことも対義語「こまぇー」に「小さい」「細い」「細かい」「吝嗇だ、けちだ」という意味分野の区別 がないのと同じ用法です。「いかぇー男じゃのー(大きい男だなあ)」「いかぇー指じゃね(太い指だね)」「この網のめゃーいかぇー(この網の目は粗い)」などと言うのです。
 「いかぇー(いかい)」と同義の形容動詞に「おーけな」「おーきな」があります。これは終止形・連体形のみならず語幹も「な」で終わる、「カリ活用」に似た特殊な活用をする形容動詞です。「あのいきゃーおーきなかった(あの池は大きかった)」「このぼくっとーはおーけな(この棒片は太い)」「おーけな目の網じゃのー(粗い目の網だなあ)」などというふうに使われる言葉です。
 県内の大半の地域で「いかぇー(いかい)」「おーけな(おーきな)」が優勢ですが、県東部の岩国市や玖珂郡の一部、西部の下関市や豊浦郡の一部などでは、「ふとい」を主に使っています。
 
        森川信夫著『面白くて為になる 山口弁よもやま話』より
 
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