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2 家(「いえ」と「うち」の使い分け)
  家屋(建物)を表現する場合、山口県では「いえ」を使います。「いえを建てる」「大きないえじゃねー」などと言うのです。
  一般的な意味での家庭・家族を指す場合も「いえ」を使い、自分の家庭・家族を意味する場合には「うち」を用います。たとえば、「あのいえにゃー優秀な子がおいー(多い)」「あんたー、はよーいえーかぇーりさん(あなたは、早く家に帰りなさい)」と言う場合の「いえ」は、一般 の家庭・家族を指しています。これに対し、自分の家庭・家族の場合には、「うちにゃー、よいよー、かしけー子がおらん(私の家には本当に賢い子がいない)」「ちぇーと、うちー寄って行きさん(ちょっと、私の家に寄って行きなさい)」などと使うのです。「はー、いえーかぇーろーや(もう、家に帰ろうよ)」と言う時の対象には他人を含んでいます。一方、対象が自分の家族に限られる場合には普通 「はー、うちーかぇーろうーや」と言います。
  抽象的な観念としての家庭・家族や家系を意味する場合は「いえ」を使い、「自分のいえの格式」「長男がいえを継ぐ」などと言います。これは標準語の用法と同じです。
  全国的な方言分布を見ると、一般に西日本では家屋を「いえ」、家庭・家族を「うち」と、区別 して言う傾向があります。一方、関東・中部地方ではいずれも「うち」、東北地方には両方を「いえ」と言う傾向がかなり見られます。こうした類型に対し、山口県においては家庭・家族を表現する場合に、やや複雑な使い分けが行われています。
 
        森川信夫著『面白くて為になる 山口弁よもやま話』より
 
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