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23 「あか(垢)」を「こけ」「こけつ」と言うことなど
 山口弁では、ほぼ全県的に、「体の垢」を「こけ」あるいは「こけつ」と言います。この語彙は、山口県以外では、瀬戸内海の島々とその周辺・四国西部・九州のかなり広い範囲・伊豆諸島・秋田県や宮城県の一部・長野県や兵庫県の辺地などの方言として使われています。柳田國男の方言周圏論の考え方に立てば、日本の周辺部や僻地だけで用いられる「こけ」「こけつ」は、「あか」よりも古い語形だと言うことができます。
  山口県内でも豊浦郡あたりでは、「こけ」を「体の垢」と「頭の雲脂(ふけ)」と両方の意味で使っています。高知県・宮崎県・熊本県の一部地域でも同様の現象が見られます。これらの地域では、「あか」と「ふけ」の区別 が曖昧なのでしょう。
  「ふけ」を意味する山口弁は「きー」です。「きー」も「こけ」同様山口県のほぼ全域にわたる方言ですが、県内以外では島根県の西部などで使われている程度です。
 「こけ」(「こけつ」)も「きー」も、山口県では老年層しか使わない方言になりました。特に「きー」は日常的に使われることが殆どなく、一般 にはきわめて理解しにくい言葉となっています。
 
        森川信夫著『面白くて為になる 山口弁よもやま話』より
 
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