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25 「芋」に関する方言
 食物に関する語彙の使い方は、戦後の学校給食を経験した年代とそれ以前の年代との間で、明確な違いが認められます。学校給食の献立表に載る食物名や料理名は、全国的に共通 語で書かれることが多かったため、それまで各地にあった方言は急速に使われなくなってしまったのです。
 日常的に食する機会が多く学校給食でも頻繁に使われた芋類に関する方言は、その典型だと言うことができます。山口県でも今や老年層しか使わなくなってしまったこれらの方言を、以下に紹介しましょう。
 「馬鈴薯(ジャガ芋)」は「きんかいも」と言います。この語は、「禿げ頭」を「金柑」になぞらえて「きんか」と呼び「禿げる」ことを「きんかになる」と言う方言に由来しています。「禿げ頭」と「馬鈴薯」の形状が似ていることによりできた言葉です。「きんかいも」は中国地方の各地で分散的に使われる方言です。
  「里芋」は多くの地域で「こいも」と言います。普通「親芋」は食べずに「子芋」だけを食べる食習慣によるものです。瀬戸内・近畿・西関東などでも分散的に使われています。豊浦郡・大津郡などでは「かぇーも(かいも)」と言いますが、これは「かゆいも」が変化した語です。「粥芋」もしくは「痒芋」の意であろうと思われます。
  「甘藷(さつま芋)」は県東部の多くの地域で「りゅーきゅーいも」と言います。中国・四国・北部九州・能登半島などの一部地域に残っている方言です。県西部や熊毛郡などでは主に「とーいも」を使います。福岡県北部や大分県の一部でもこう言います。「りゅーきゅーいも」も「とーいも」も、その経由地・出身地を示すいかにも渡来作物らしい方言だと言うことができるでしょう。
  ちなみに、ただ「芋」とだけ言う場合、山口県では普通「甘藷(さつま芋)」のことを意味します。
 
        森川信夫著『面白くて為になる 山口弁よもやま話』より
 
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