イラスト おもしろくてためになる山口弁よもやま話 方言のトップへ


29 「のんた」「のーた」「ねーた」「うんた」「んた」など
 「のんた」はかつて山口弁の代表格とも言うべき助詞・感動詞(間投詞)でしたが、最近では高齢者以外には殆ど使われなくなりました。この言葉は文末や語句の切れ目などに用いて、軽く感情を添えたり、感動・驚きを強調したり、念押しをしたりする表現で、「のー、あんた」という親愛の気持ちを込めて相手に語りかける言い方が短縮化したものです。「のー」は「なあ」「ねえ」ぐらいの意で用いる方言で間投助詞。ですから、「のんた」のもともとの意味は「なあ、あなた」「ねえ、あなた」なのですが、現在では「あなた」の意が含まれていることを意識して使う人は少なく、間投助詞「のー」に近い感覚で用いる人が多くなっています。ただ「のー」よりは「のんた」の方が丁寧な表現という印象はあります。
  「のんた」とほぼ同じ意で使用される山口弁には、他に「のーた」「のいた」「ねーた」「うんた」「んた」などがあります。「のんた」「のいた」「のーた」「うんた」「んた」は、どちらかと言うと男性がよく使い、「のんた」より「のーた」の方が上品、「うんた」「んた」はやや粗野な言い方という印象があります。女性も使わないことはありません。「ねーた」は女性がよく用い、「ねー、あんた」の短縮化した言葉。優しく上品な響きがあります。男性も相手に優しく話しかけたりするような場合には「ねーた」を使います。いずれにせよ、昭和以降に生まれた人はあまり使わなくなっている、衰退現象の著しい方言です。
 使用例をいくつか紹介しておきましょう。「さむーなったのんた(寒くなったなあ、あなた)」「あつーありますのいた(暑いですなあ、あなた)」「それがのんた、むつかしーねーの(それがなあ、あなた、難しいのだよ)」「そりゃー、えーことじゃのーた(それは、良いことだなあ、あなた)」「はよーやろーでの。うんた(早くやろうぜ。なあ、あなた)」「かぇーらしー子じゃねーた(可愛らしい子だねえ、あなた)」
 
        森川信夫著『面白くて為になる 山口弁よもやま話』より
 
   次に学習したいテーマボタンをクリックしてください。
語彙・語源 音韻・アクセント 文法・表現法 言語文化・民俗