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30 動詞の連用形+「い」が連母音融合して命令の意を表す@
 山口弁では、動詞の連用形の語尾が長音化して、比較的丁寧な命令の意を表します。これは、動詞の連用形に念押し・強調の意を表す山口弁の終助詞「い」の付いたものが、連母音融合により長音化したのだと考えられます。つまり、「書きい」「来(き)い」「しい」「起きい」など、五段・カ変・サ変・上一段の動詞連用形+終助詞「い」で連母音[ii]は融合して[i:]となり、「食べい」など下一段動詞連用形+終助詞「い」では連母音[ei]が融合し[e:]になったのです。「書きー」「来(き)ー」「しー」など五段・カ変・サ変動詞の連用形による丁寧な命令表現は、命令形の「書け(ー)」「来い」「せ(ー)」とは語形が違いますが、「起きる」「食ベる」など上一段・下一段動詞は、山口弁では連用形と命令形が同形なので、アクセントもしくは下に付ける助詞によって、丁寧な命令表現と普通 のそれとを区別します。「起き-」「食べー」は連用形の丁寧な、「起き-」「食べー」は命令形の普通 の命令表現と見ることができます。文末にあって念を押す意を添える終助詞「ね」は連用形の丁寧な命令表現に付き、同じ意を持つ終助詞「や」は普通 の命令形表現に付きます。
  同じく「よ」は両方の命令表現に付きますが、「起き-よ」「食べーよ」(連用形・丁寧)、「起き-よ」「食べーよ」(命令形・普通 )というふうに、アクセントに区別があります。
 
        森川信夫著『面白くて為になる 山口弁よもやま話』より
 
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