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31 動詞の連用形+「い」が連母音融合して命令の意を表すA
 「行きー」「行きーね」など、動詞の連用形の語尾が長音化して、比較的丁寧な命令の意を表す山口弁の発生要因については、動詞の連用形に念押し・強調の意を表す終助詞「い」が付き、連母音融合によって長音化したものと推測することができます。ただしこれには、動詞連用形にいきなり終助詞「い」が付いたのではなく、その前段階の言語現象があったものと思われます。つまり、標準語の「〜なさいませ」にほぼ相当し軽い敬意を表す山口弁「〜さんせ」「〜やんせ」という助動詞命令形が省略された動詞連用形の語尾に「い」が付き、それが連母音融合で長音化したのだと考えられるのです。「〜さんせ」「〜やんせ」の部分には、活用語尾「せ」が脱落して助詞の働きをするようになった「〜さん」「〜やん」(標準語の「〜なさい」の意)を当てはめて考えることもできます。これに似た現象は標準語などにも見られ、それは上記の説の論拠でもあります。たとえば、「お行きなさい」の「なさい」が省略されて「お行き」、「行きなさい」の「さい」が省略されて「行きな」となり命令の意を表します。関西方言でも「行きなさい」の「さい」が省略されて「行きーな」となります。ぞんざいな感じの「行きな」は別 として、「お行き」も「行きーな」も動詞の連用形による比較的丁寧な命令表現です。
 
        森川信夫著『面白くて為になる 山口弁よもやま話』より
 
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