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34 可能を表す副詞「えー」と「よー」
 山口弁の副詞「えー」は、古語の副詞「え」と今でも殆ど同じ使い方がされます。「えー」は古語の動詞「得」の連用形が副詞化した「え」が長音となったものです。古語の「え」も表記上は一拍語ですが、実際の発音は長音化して二拍になっていたのではないかと思われます。現在の関西方言で、「手」「目」「歯」などの一拍語が長音化することから、それを類推することができます。
  下に肯定表現を伴う場合は、「〜することができる」という可能を表す意味になります。たとえば「こりょー、えーやるかね(これを、やることができるかね)」というように使います。
  下に打消し表現を伴う場合には、「〜することができない」という不可能を表す意味になります。「わしゃー、そねーなこたー、えー言わんでよ(わしは、そんなことは、言えないぞ)」「誰もえーやらずに、ほーたらかっしょった(誰もやれないで、放っていた)」というような表現がなされます。
 「えー」と同様の使い方がされる言葉に「よー」があります。これは副詞「能く」がウ音便化したものです。西日本域の広い範囲でしばしば使われる、可能・不可能の表現です。「よー来るか(来られるか)」「よー行かん(行かれない)」というふうに使います。
 
        森川信夫著『面白くて為になる 山口弁よもやま話』より
 
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