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39 「〜(せ)んでも」「〜(せ)いでも」
「〜(せ)ーでも」

 「〜(し)なくても」という打ち消しの逆接仮定条件を表す場合、山口弁では、動詞の未然形と接続助詞「でも」の間に打ち消しの助動詞「ん」もしくは「い」が挿入するか、動詞未然形の活用語尾が長音化して「でも」に接続します。「来なくてもいい」は「こんでもえー」「こいでもえー」「こーでもえー」と表現され、「食べなくてもいい」は「たべんでもえー」「たべいでもえー」「たべーでもえー」となります。
  「ん」に接続する「でも」は、接続助詞「ても」が撥音に続くので濁音化したものです。長音に接続する「でも」は、打ち消しの意を含む接続助詞「で」に係助詞「も」の付いた古語で、動詞の未然形に続きます。清少納言が『枕草子』「春はあけぼの」の段に、「霜などのいと白く、またさらでもいと寒きに」と書いている「でも」と同じものです。
 打ち消しの意を表す山口弁「い」は、同じ打ち消しの助動詞「ん」が転訛したのか、動詞未然形活用語尾の長音が転訛して助動詞の働きをするようになったものなのか、はっきりしません。活用形は連用形の「い」のみです。この「い」と長音による打ち消し表現は、主に明治・大正生まれの老年層に使われています。
 
        森川信夫著『面白くて為になる 山口弁よもやま話』より
 
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