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40 打ち消しの過去「〜だった」「〜んじゃった」
「〜んかった」

 山口弁で「〜(し)なかった」という打ち消しの過去を表す場合、「〜だった」「〜んじゃった」「〜んかった」という連語がよく用いられます。いずれも助動詞の働きをして、動詞の未然形に付きます。たとえば「きにょーは家から出だった(昨日は家から出なかった)」「そりゃー知らんじゃっただぇ(それは知らなかったよ)」「誰も分からんかったねー(誰も分からなかったね)」などと言うのです。
 「〜だった」は、本来「〜ざった」であったのが訛ったものです。山口弁においては、標準語(共通 語)の「ザ」「ゼ」「ゾ」が、しばしば「ダ」「デ」「ド」と発音されるからです。「〜ざった」は打ち消しの文語助動詞「ず」の連用形「ざり」と過去・完了の口語助動詞「た」とが融合した連語です。
 「〜んじゃった」は大体どの年代層においても普通に使われていますが、「〜だった」(「〜ざった」)は主に老年層が用いる語で、若い人は殆ど使いません。老年層の一部には「〜だった」(「〜ざった」)のみを用いる人もあります。一方、比較的新しい方言である「〜んかった」は、戦後生まれの中年層までの人がよく用い、老年層ではあまり使われていません。また、老年層の一部には「〜なんだ」を使用する人もいます。
 
        森川信夫著『面白くて為になる 山口弁よもやま話』より
 
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