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49 文末にあって念押し・強調の意を表す終助詞「い」A
 文末にあって念を押す気持ちを添えたり、強調の意を表したり、語調を整えたりする「い」は、頻繁に連母音融合をします。前にも書きましたが、「それかいね」は「それかぇーね」というように、アイ[ai]がアェー[ æ▲]の発音になります。「知っちょるいや」は「シッチョルィヤ」と発音されることが多く、動詞の終止形に「い」が付く場合の[ui]はしばしば[ui]になります。これは、「さむい(寒い)」が「サミー」、「しんるい(親類)」が「シンリー」というふうに、形容詞や名詞の[ui]が普通 [i▲]になるのと対照される発音です。動詞の未然形+「う」または「よう」に「い」が付く場合は、「う」が脱落して「一緒に行こい」などとなります。その「イコイ」は連母音が融合して「イコェ」になり、[oi]は[oe]と発音されます。一方形容詞の場合は、「くろい(黒い)」が「クレー」となるなど[oi]は[e▲]と発音されることが多いのです。
 山口弁の文法的特徴に、動詞連用形の語尾が長音化し比較的丁寧な命令の意を表すということがありますが、実はこれも、本来動詞の連用形に助詞「い」が付いたものなのです。「起きい」「話しい」「来(き)い」「しい」など、上一段・五段・カ変・サ変の動詞連用形+助詞「い」の[ii]は融合して[i▲]となり、「投げい」など下一段動詞連用形+助詞「い」の[ei]は融合で[e▲]になるのです。このように終助詞「い」は、しばしば連母音融合をするので、「い」という方言を使っている認識を持たない人も少なくありません。
 
        森川信夫著『面白くて為になる 山口弁よもやま話』より
 
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