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52 「どろおとし(泥落とし)」のことなど 
 田植え後の休日、また、その祝いのことを、山口県では「どろおとし(泥落とし)」とか「しろみて」などと言います。水田で「どろもぶれ(泥まみれ)」になる重労働を終えた後の、ささやかな楽しみです。
  農作業が機械化される以前は、大勢の「そーとめ(早乙女)」が「てご(手伝い。手助け。)」に出て田植えをしていました。「てご」の労働力はしばしば「てまがえ・てまがぇー」という方法によって集められました。これは、お互いに仕事を手伝って労働を交換し合うことを言い、村落における労働力補充と共同体としての認識・秩序を維持するための生活の知恵だったのです。このことに似たシステムとして、用具などの物を共有にする「もやい・もやぇー」という慣習もありました。「もやい」の動詞は「もやう」です。「てまがえ」や「もやい」の慣習は、農業が機械化された現在でも一部に残っています。
  しかし農村におけるライフスタイルの急激な変化により、古くからの「どろおとし」(「しろみて」)の行事は今日では殆ど廃れてしまいました。かつてはあちこちの家で見られた、「ほてんどもち」とか「いぎのはだんご」と呼ばれる「ホテンド・ホテンドー・イギノハ(サルトリイバラ)」の葉で包んだ餅を作って食べる習わしも、今では珍しいことになっています。
 
        森川信夫著『面白くて為になる 山口弁よもやま話』より
 
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