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6 形容動詞の、『ジャ活用』と『カリ活用型特殊活用』
  標準語における形容動詞の「ダ活用」は、山口県方言では「ジャ活用」となります。断定(指定)の助動詞「だ」が山口県においては「じゃ」になることから、体言を語幹とし断定の助動詞「だ」を語尾として成る「ダ活用」型の形容動詞には、文法的に当然起こりうる現象なのです。「静か」でその一例を示してみると、「静かじゃろ・う」(未然形)、「静かじゃっ・た」「静かじゃ・なぇー」「静かで・あります」「静かに・あります」(連用形)、「静かじゃ」(終止形)、「静かな・とき」(連体形)、「静かなら」(仮定形)というような活用になります。
  一方これとは別に、山口県方言の形容動詞は「カリ活用」に類似した特殊型活用もします。「カリ活用」とは、もともと文語の形容動詞の活用型の一つで、現在では形容詞の活用の一部として扱われているものです。活用は、「静かなかろ・う」「静かな・ろう」「静かなじゃろ・う」(未然形)、「静かなかっ・た」(連用形)、「静かな」(終止形)、「静かな・とき」(連体形)、「静かなけり・ゃー」(仮定形)となります。
 後者の活用の特徴は、終止形・連体形はもとより語幹までも、「静かな」のようにすべて「な」で終わることです。伝統的な山口県方言では、どちらかと言うと後者の方が優勢です。「大きな」「でんきな(意地っ張りな、片意地な、頑ななという意)」など連体詞とも解される語には、後者の活用しかありません。「あの人は綺麗なね」「今日の海は穏やかなです」「元気なかね」「料理が豪華なよ」などというような使い方をします。
 
        森川信夫著『面白くて為になる 山口弁よもやま話』より
 
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