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7 「かばちをたたく」 
 「かばち」はもともと、上下の顎(あご)の骨、或いは頬から顎のあたりにかけての部分の意味で使われた古語です。現在でも、顎や口の意で用いる方言が各地に残っており、山口県でも大島郡などで老年層を中心に使われています。
  現在山口県で使われている「かばち」の一般的な意味は、@「口答えをすること。生意気な理屈をこねること。文句を言うこと。またその人」 A「饒舌なこと。口達者なこと。大言壮語すること。またその人」の二つが主で、中年層以上の人が使う傾向にあります。@の意で用いる場合は、普通 「かばちをたたく」とか「かばちを垂れる」などという表現をします。「よー、かばちゅーたたくおなごじゃ(よく口答えする女だ)」「かばち垂れんな(理屈を言うな)」などと言ったり、「かばち!」と感動詞のように使って相手を一喝したりもします。Aの意で用いる場合は「かばちをたたく」「かばちを垂れる」のほかに「かばちがえー(良い)」「かばちが立つ」などという表現もします。「ありゃーかばちがえーでね(あの人は口達者だよ)」「おじーまーかばちが立つのー(おじさんは口達者にしゃべるなあ)」というふうに使いますが、これらはどちらかと言うと褒め言葉ではなく、皮肉まじりの穿った表現法だと言うことができます。
 
        森川信夫著『面白くて為になる 山口弁よもやま話』より
 
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