「1人1台端末による新たな学び」通信 第4号(令和2年10月)

 第2号、第3号では、国語・地理歴史・公民・数学・理科・外国語を中心に、1人1台端末の活用事例を紹介してきましたが、第4号では、専門教科も含めた、それ以外の教科での1人1台端末の活用具体例をお示ししながら、これまでの教育実践とICTとのベストミックスによって得られる学習効果について紹介していきます。

 

1 一斉学習

(1)インターネット上にある映像の利用
 今までは、教科書や資料集等に載っている写真等で確認をしていましたが、1人1台端末を活用して、効果的に動画を提示することで生徒の理解を深めることができます。

 例えば、農業の科目である「農業と環境」や、水産の科目である「水産海洋基礎」等の授業では、「作物の分類」や「海底地形や海洋資源」等の学習の際に、 タブレット端末を活用して映像を検索したり、他分類や他地域と比較したりすることで、学習した内容の理解を深めることができます。

 

(2)表計算ソフトの活用
 1人1台端末にある表計算ソフトを活用することで、一人ひとりが考えながら効率よく学習を進めることができます。

 例えば、商業の科目である「ビジネス基礎」で学習する、単利法と複利法について、 タブレット端末の表計算ソフトを活用して、それぞれ異なる仕組みと特徴について学ぶことにより、資金の借り入れや投資において、単利と複利により異なる返済金額・運用成果が視覚的に得られるため、金融について考察する時間を確保できます。

 

(3)三次元CAD(コンピュータ支援設計)の活用
 今までは、紙面に書かれた二次元でしか見ることができなかったものも、1人1台端末を活用することで、より視覚的に理解をすることができるようになります。

 例えば、工業の科目である「機械製図」の学習で、 タブレット端末を用いて三次元CADソフト等を利用することにより、正面図、平面図、右側面図、かくれ線を正確に図示することで、いろいろな方向から繰り返しシュミレーションでき、イメージを膨らますことができます。

 

2 個別学習

(1)カメラ機能の活用①
 今までは、自分の体の動きを、自分自身で見て確認することができませんでしたが、1人1台端末を活用すると、例えば、体育の授業で行う器械運動において、自己の動きを タブレット端末のカメラ機能を活用して撮影することで、その動きの局面をスロー再生や静止画で繰り返し確認することが可能となります。自己の課題解決に取り組む方向性や課題解決に向けた進捗状況を確認することができます。

 

 

(2)カメラ機能の活用②

 例えば、美術の授業では、 タブレット端末を活用して、対象の動きや時間の経過に伴う変化などを工夫して表現したり、対象を撮影して、その画像・動画の複製や合成、形の変形や変換、色の置換や変換及びその他の機能によって多様なイメージを表現したりすることが可能となります。これにより、映像表現の可能性について考え、映像メディアによる視覚的な要素の多様な働きについて実践的に理解するとともに、その特性を生かして創造的な表現活動を行うことができるようになります。また、表現活動の中で、生徒が主題に合った素材や資料を選択するための判断力やメディアリテラシーを養うとともに著作権、肖像権などに対する理解を深めることができます。

 

3 協働学習

(1)クラウド上の共有シートの活用①
 例えば、「社会と情報」の授業では、「個人情報を守るために気を付けていること」や「自分のスマートフォンを紛失した場合にどのような情報が流出するか?」について、 タブレット端末の共有シートに入力し、お互いの意見を確認することができます。さらには、グループで意見をまとめ、クラスで発表し、他の意見を参考にした上で、自分の意見を再構築して 共有された振り返りシートに入力することで、深い学びにつなげることができます。リアルタイムで共有シートに記録され、瞬時にお互いの意見を確認することができるとともに、共有シートや振り返りシートなどが蓄積されることにより、個々の生徒の考えの変容を見取ることができます。

 

(2)クラウド上の共有シートの活用②
 例えば、家庭科の科目である「フードデザイン」では、食生活を取り巻く現状と課題について、 自分の考えをタブレット端末の共有シートに入力することで、即座にお互いの意見を共有でき、新たな視点を基にタブレット端末を用いて調べ、自分の考えを再構築することができます。さらに、同じ課題をもつ生徒どうしで課題解決に向けて協議を行い、タブレット端末を用いてグループの意見を発表した後、各自で学んだことを振り返ることで、幅広い視点から食生活の在り方について考えを深めることができます。

 

(3)インターネットの活用
 例えば、音楽の授業では、鑑賞教材として扱った音楽、同じ作曲家の音楽、同じ演奏形態の音楽、同じ曲種の音楽など インターネット上でキーワード検索する課題を出すこともできます。授業での学びを起点として、個々に音楽とのかかわりを広げたり深めたりすることができます。

 

(4)Web会議システムの活用
 今までは、専門家との交流は学校に来ていただいて対面で行っていましたが、1人1台端末を活用することで、インターネットを介した交流が可能となります。

 例えば、美術の授業では、 Web会議システムを用いて、学校外の美術の専門家から学んだり意見交換をしたり、他校の生徒たちや地域の人々、海外の人と学校にいながら交流することができます。これにより、様々な地域における美意識や創造性を感じ取ることで、日本の美術の歴史や表現の特質、それぞれの美術文化において見られるよさなど、異なる考えやそれぞれの国や地域の美術文化にリアルタイムに触れることが可能となります。また、多様な見方や感じ方に触れることで、鑑賞の視点を豊かにし、価値意識をもって生徒自身の見方や感じ方を深めることができます。

 

 「1人1台端末による新たな学び」通信 第4号(令和2年10月) (PDF : 248KB)

山口県教育庁高校教育課