1年「かたち」〜はこであそぼう〜 





 子どもは空き箱や空き缶で遊ぶことを非常に好む。
箱1つあれば、それが怪獣になったり、ロボットになったりと、 子どもたちの想像力にはこちらが感心させられることが多い。

 そこで、 日頃から空き箱や空き缶を集めておくように指示し、 家庭から持って来させる。
持って来た箱は、 教室においておくと、 何かをつくってみたい、 こんなものができそうという気持ちを喚起させるのに効果的である。
「ぼくは、 おかあさんに、 お菓子の入っていた大きな箱をもらったよ」
「これはチョコレートが入っていた箱だよ」
 持って来た箱を紹介しながら、 頭にのせ、 とんがり帽子みたい、 とか、 お家の屋根みたい、 新幹線だとさけぶ。児童の感性を大切にしたい。

○ 箱の仲間わけ
 そこで、持ってきた箱や空き缶を〈ころがして遊ぶ〉のに都合がよいものと〈積んで遊ぶ〉のに都合がよいもののふたつに分けさせる。
どちらにも入らないと考える児童もいるので、その他に〈並べて遊ぶ〉場もつくり、3つにわける。
 転がるものと積んで遊ぶものとを分別したら、しばらく児童の思いにまかせて、転がしたり、積んだりしながら遊ばせる。子供は、遊びながら形の特性に気づく。

○ ころがして遊ぶもの
 ボール(球)、空き缶、お菓子の入っていた筒(円柱)、クラッカーの空き缶(円錐)と球面のあるものを次々と選んでいく。円錐を手にして、
「これはころがるかなあ?」
「でも、とんがっているよ」
ジュースの缶を持ち出して違いを比べさせると、
・ 片方がとんがっている。
・ ジュースの缶はどちらでも立つが、クラッカーの空き缶は逆さまにしたら立たない。
 では、「ころがしたらどうなると思う?」と聞くと、「くるくる回る」という子どもがいる。
以前に、運動場でコーンをころがしたことから気が付く。
そこで、みんなでころがしてみて、ジュースの缶との違いを確かめる。

 転がる物と積んで遊ぶ物とを分別したら、しばらくは子どもの思いにまかせて、ころがしたり、積んだりしながら遊ばせる。

○ 斜面を転がして遊ぶ
 傾斜のある板(すべり台)のところで転がす遊びを選んだ子どもは、円柱や球を選んで持って行く。
そのうち、八角柱の菓子箱もながめていたが持って行き、転がしてみる。
すべり台では転がるが、緩い傾斜の坂では転がらないことや、四角柱の箱は転がるのではなくすべっていくことに気づく。

○ ボーリング遊び
 牛乳パックやジュースの缶を並べてピンにみたて、ボールや空き缶を転がしてボーリングをする子どももいる。
空き缶では自分が思ったような方向に転がらないことからボールに人気が集中する。
しかし、ボールの数は少ない。
そこで子供たちは手当たり次第に転がりそうな物を持ってくるのである。
転がる物の仲間に入っているものでも、転がりやすいもの、転がりにくいものと、自分で確かめながらさらに細かく分別することができる。

○ 積んで遊ぶもの
 積んで遊ぶところでは大きい物を下にして積んでいる。
ただ積むだけではおもしろくない子供たちは、そのうちに高く積む競争をし始める。
四角柱の箱も横にするより縦にした方が高くなることに気づいている。
ジュースの缶を高く積むために、底部を広くすればよいことに気づき、ピラミッド型に積み上げている。

○ 並べて遊ぶ
 箱や空き缶で電車、公園をつくったりする児童もいる。
筒状の外枠に引き出し式の箱になった物は、ころがすのにも、積むのにも入らなかったが、ここではトンネルや、引き出しになったりしている。
建物や動物、乗り物などをつくる児童もいる。





 次はいよいよ立体物の再構成である。
ここでは、児童が、箱の持つ機能性や特性を生かしながら自由に構成を楽しむようにするが目的をもった構成にさせる。 みんなで協力して、「ぼくたちの町」をつくろうという目標を持たせる。
つくっているものを見ながら、テーマ(動物園をつくろう、お店やさんごっこをしよう)を設定してやるとよい。
 この時、子供たちは箱を切って細工をしたがる。箱を切るというのは箱の形を空間的に理解するのに大変都合のよい活動である。





1年生の児童は立体図形と平面図形を見せると、両方とも四角いという表現をするなど、あまりはっきりと区別して捉えてはいないようである。
そこで、これら2つの図形が論理的に、あるいは分析的に思考できるようにするために、立体図形の構成要素に着目させるために立体図形を平面に写し取る活動として、ここではスタンプを利用する。
 雑巾に数色の絵の具を染み込ませた物をバットに入れておき、それに箱やジュースの空き缶などを押し付けて画用紙にスタンプさせ、形を写し出すというものである。
 模造紙を広げ、前時につくった建物や動物などを並べさせ、「ぼくたちの町をつくろう」というめあてを持たせる。
すると、児童は線を引き、丸や四角の線を書き込んでいく。
空いている所にスタンプを押して、丸や四角、三角などの模様を作る。
そんな中でスタンプの重なりの部分に興味を示す子供もいる。
 平面に立体をおいて写し取る活動よりも、簡単で、色彩的にも楽しめることからスタンプ遊びは学習を広げるのに適した活動である。


 ここではできるだけ子供の身近にある箱や空き缶などを使って学習することに焦点を合わせた。
立体模型も積み木の際には便利であるが、これらはこの単元の時にだけ活用するのではなく、日頃から教室の中に遊び道具として用意しておくとよい。
また、すべり台は屋内用の物でなくても、斜面があればよいので、跳び箱の踏切板とか、板を斜めにしておくとかして是非用意したい。
 図工科の学習に箱を使っていろいろなものを構成する学習がある。
それに合わせて総合的に指導計画を組むことも考えられる。

授業資料