イラスト おもしろくてためになる山口弁よもやま話 方言のトップへ


45 尊敬語「〜ちゃった」「〜ちゃーた」
 広い年齢層にわたり頻繁に用いられる尊敬語に「〜ちゃった」があります。
  これは、動詞や動詞型活用をする助動詞の連用形に付いて動作主への敬意を表す接続助詞「て」と、同様に動作主への軽い敬意や親愛の情を表す助動詞「やる」の連用形、さらに過去・完了の助動詞「た」とが接続した「〜てやった」が音韻変化してできた連語です。「〜なされた」「〜なさった」という意を表し、過去・完了の形しかありません。「先生は、はー来ちゃったですか(もう来られましたか」「何て言うちゃったかね(何と言われたかね)」のような使い方をします。
 「〜ちゃった」は、五段活用の撥音便・ウ音便とガ行イ音便の動詞、すなわちナ行・バ行・マ行・ガ行の五段動詞連用形に付く場合には、「〜じゃった」となります。また「〜ちゃった」「〜じゃった」は、老年層を中心に「〜ちゃーた」「〜じゃーた」と発音される傾向があります。これは助動詞「〜やる」ではなしに「〜やーる」の方が接続し変化したものであると考えられます。
  尊敬語の「〜ちゃった」は、東京言葉で「〜してしまう」という意を表す「〜ちゃう」の過去・完了形や、山口弁で「〜してやる」「〜してある」の意を表す「〜ちゃる」の過去・完了形とは違うものです。「先生がわろーちゃった(先生が笑われた)」は動作主への敬意を表す山口弁。「わしゃー、わろーちゃったいや(私は、笑ってやったよ)」は敬意を持たない山口弁。「わらっちゃったよ(笑ってしまったよ)」は敬意を持たない東京言葉です。
 
        森川信夫著『面白くて為になる 山口弁よもやま話』より
 
   次に学習したいテーマボタンをクリックしてください。
語彙・語源 音韻・アクセント 文法・表現法 言語文化・民俗