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58 「からすなぇー」「すじゅーひく」ことなど
 山口県では正座することを、殆どの地域で「かしこまる」、玖珂郡北部などで「かしまる」、豊浦郡では「ひだまずく」と言います。胡座(あぐら)をかくことはほぼ全県的に「ひだをくむ」「ひだくむ」「ひだーくむ」などと言います。「ひだ」は本来「膝(ひざ)」のことですが、山口県では標準語のザ行音(ザ・ゼ・ゾ)をダ行音あるいはそれに近い音で発音する人が多く、普通 は「ヒダ」に聞こえます。
  寒い中で同じ姿勢をとり続けていると、手足など体の一部の筋肉が引きつったり痙攣(けいれん)したりして動かなくなることがあります。山口弁でこれを「からすなぇー」と言います。「ゆんべ寝ちょったら、からすなぇーが来た」「よーからすなぇーが行っていけませんにーね」などと用います。「からすなぇー」が局所性の引きつけや痙攣を言うのに対し、全身性、局所性いずれの場合にも用いる表現が「すじ(筋)を引く」です。格助詞の「を」はしばしば前接部と融合するので、「スジヒク」「スジーヒク」「スジヨヒク」「スジューヒク」などと発音されます。老年層においては、「スジューヒク」が最もよく使われます。伝統的な山口弁では普通 、イ[i] +オ[o] →ユー[ju▲] という音韻融合が頻繁に起こるのです。また、引きつけ・痙攣を起こすほどひどく驚いたり衝撃を受けたりする場合の比喩的な表現としても「筋を引く」が使われます。「そねーなことーせたら皆すじゅー引こーでよ」というような表現が用いられます。
 
        森川信夫著『面白くて為になる 山口弁よもやま話』より
 
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