◆サラリーマンをやっていることに不安がよぎって
社宅に住み、子どもも長男、次男、長女と3人に恵まれ、妻は趣味が高じて友だちと花屋を経営するなど、それなりに元気な家庭生活だった。
でも40歳過ぎて、物足りなさと不安も感じるようになってきたんだ。子どもも思春期にさしかかり、女房の心配も増えていたし、何にも増してリストラの波が押し寄せている昨今、このまま会社で働き続けることができるのかって。
けっこう落ち込みやすいタイプなのか、そんなときは必ず子どもの頃のあの自然体験や田畑の光景がたまらなく懐かしくなったんだ。
ある日、女房が、山口の新規就農等支援制度の話を、偶然お客さんから聞いてきた。
何だかこの道を選べって言われているようなタイミングだったな。
僕よりもやけに女房のほうが乗り気で、花を売るより作りたいなんて。
次男が喘息(気味だったので、環境のいいところへ行くのもいいと思ったし、都会で疲れている子どもたちものんびりした田舎生活のほうがいいと思えたし、第一、自分のサラリーマンとしての適性にも疑問を感じ、会社は早期退職制度も勧めていたし、山口に住んでいる両親も年をとってきたしと、どこをとっても、農業をやるしかないという感じがしたよ。
子どもたちに相談したら、「いいかも」なんて、けっこうあっさり了解がとれて。
3人とも自然が好きだったからね。
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